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自分にとってblogは人生の覚書。Art、映画、音楽に関するTopicsを新旧おりまぜ日々更新中。毎日ココロに浮かんでは消える想いなどつぶやきます。たまに旅をします。(c) jigenlove All rights reserved.


by jigenlove
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ラファエル・アマルゴ at Bunkamuraオーチャードホール

立派なもみの木が飾られたエントランスを足早にくぐり、やや間際に席に着き一呼吸ついた。
通路際の1階29列目、悪くない席だ。
少し待つと照明が落ちた。ショウがはじまる。
見上げると天井の飾り照明が消された後も発光してる。
もしかすると今この瞬間が一番幸せかもしれない。
これからかならず楽しいことが起こる。予感と期待がないまぜになる。
クリスマスや誕生日にプレゼントを開ける前と包みをほどくその瞬間。
待ちきれなくてどうにかなりそうになる。
男と交わり相手が射精する直前のような、こらえきれない感じに似ているかもしれない。

幕が開けた。
白いスポットライトが降り注ぐ舞台に何か草間弥生のオブジェを思わせる白い物体がいくつも置かれている。
今日の主人公がソロをつとめるイントロダクションがはじまり、やがてそれは何対ものフラメンコシューズだと知る。
導入部分からすでになにかを予感させてくれた。

決めのポーズの連続
型の連続

舞台が切り替わりライトに照らされると、典型的な伴奏者がいるフラメンコの構成があらわれる。黒装束に身を包んだ歌い手の老女二人とギターやいくつかの弦楽器と、座って叩く太鼓の男たち。
男たちの黒い髪はみなゆるいウェーブがかかり、長く濡れたようで後ろにひとつに結っている。
その黒ずくめの人々の中央へ、純白の三つ揃いを着た男がするりと入った。
照明の中央に歩むそのときからすでにステップがはじまっている。
それからはどこを切り取っても見ごたえのある動き、止まり、また動く。
暗がりにスポットだけの舞台で白いスーツが映える。
観客の視線を一身にうけ、何度も何度も美しいポーズで止まってはまた動き出す。
暗闇にその残像が残り、影送りのようで目をそらすことができない。

伴奏者との掛け合いにも見入る。歌声が・・・その声にひたすら聴き入る。
あの声をなんと言えば少しでも伝えることができるのか。
声が、声が裂ける。
彼女のそのアアアア・・・という歌声が、年齢や性別や環境や国や宗教や生い立ちや何もかもをまたぎその空間を震わす振動としてそのままわたしの心臓を震わせる。
もっともっとききたいしみたい。

場面が効果的に移りかわる。
ライトが演者のある部分を切り取る。

街の音がする。騒がしい車や人の通り過ぎる音。
ここはスペイン、バルセロナは歓楽街ランブラス通り。
ストリートを象徴するjeanを着てはすっぱな様子で出てくる数人の男女。
フラメンコを見に渋谷へブルジョワ層が集まるこのホールにいきなりブレイクダンスが始まる。
動きや舞台のアクセントかメタファーのように対の動きをする、ダンサーが二人。
コミカルで親しみやすい双子の(ような)ダンスに観客もほっとする。
それまでのある張りつめたテンションが緩む。観客は彼らに簡単に心を許してしまう。
彼らとわたし達の距離がぐっと近くなる。

次はぼろきれの様なカットオフに身をつつんだ女がタップのステップを踏む。
『ついてこられる?』
と観客を挑発している。
たたみかけるような早いリズム。
足音が小気味よく床に響くから手拍子はしない。
その打ち付ける音をきき目を凝らしていたい。

最後のストリートの演者はそれまでごろつきのような素振りだったくせに
ひとたび踊りだすと主役の本人だった。
ぼろをまとってもその品は損なわれず、かえって引き立つ。
それぞれのソロの見せ場も終え、ラフに皆で抱き合ったりばくてんしていたかと思うと、最後に同じ音で全員がそれぞれのジャンルの振りを踊った。
不意打ちでくらくらするくらい格好良い。

趣向の違う印象的な男女の踊りもあった。
舞台にはベッドと椅子がひとつ。
半裸の男女が一組ベッドの上で踊るとそこへもうひとり、女がすべりこむ。
そのバランスがにくい。
ふたりでひたすら愛をあらわしても、ともすると閉じた表現になるところをもうひとり絡ませる。
これがあとひとりの男だったなら、三人で踊るとき力関係がおかしなことになってしまう。
女性の弱さと男性の強さが強調されてしまう。
そこへ女が二人。
ベッドでどちらかと男が体を合わせるとかたわらの椅子で女が踊る。
三人でからむ。静かにこの一幕が終わった。

炎がスクリーンに全体に映しだされる。
テーブルと椅子、場末の酒場のような群集がステージ左端にかたまっている。
歌い手が即興のようにメンバーの名を一人ずつ呼ぶ。
ひとり、またひとりと群集の中央へすべりこみ踊りが続いてゆく。

劇場の幕が開けるとそこはスペインであった。



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by jigenlove | 2005-12-03 21:20 | LIVE!!!